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おっちゃんの「課外学習」

2008年9月02日

ギャルゲーのために、フォントを作った男 vol.7

筆者:いぬ「今はしょうがない」が大嫌いだった

TOKYOナンパストリート「TOKYOナンパストリート」が、ゲームシステムにおいてはそれまでなかった「コミュニケーションゲーム」というジャンルを作り上げたこと、さらにモニタ画面上の文字表現においてさまざまな工夫が施されていることを見てきた。これだけの先駆性を持ったゲームを一人で企画し、一人で作りあげた関野さんには、どんな思いがあったのだろうか。


「"普通の感覚"から出発しないとダメだろうなあ、っていうのはあった。普通っていうか、素人さんの考え方っていうか。あの頃ずーっとそれを思ってたよね。ゲーム会社のプログラマーが言う『関野さん、今はしょうがないんですよ』とかっていう一言がすごくイヤでさ、「ホントかな」って、いつも疑ってた」

たとえば「TOKYOナンパストリート」では、テキストのスクロールにも工夫が施されている。テキストを画面の上から下に送る、つまりスクロールをさせる時は、当時は1行分のスペース幅でカクカクと送っていくことしかできなかった。というよりそれが「普通」だった。関野さんはそれに納得がいかず、もっと細かい幅で、なめらかにスクロールさせることができないのか、と、プログラム担当者に詰め寄ったことがあるそうだ。

今なら「オタク」と言われるのかもしれない。当時は「パソコン少年」、あるいは「パソコン青年」と呼ばれていた、いわゆる「その世界」に浸かっている人が作るプログラム。そこには「普通の感覚」がなかった、と関野さんは言う。僕は思う。「その世界の人達」にとっては「できること/できないこと」の区別は自然で普通だった、と。漫画制作からゲームの世界に飛び込んだ関野さんは、外の世界を知っていた。だからその「普通」が普通じゃないことに気付いたのだ、と。

「さくま(あきらさん。『桃太郎電鉄』で有名)もそうだし、堀井(雄二さん)もそうだし、やっぱり漫画の方から来てるよね、外から。ちょうどそういう時期だったんだよ。遊びとして面白いというか。新しい表現として注目してるというか。そういう人たちが普通の感覚を持ち込んだ。ゲームというジャンルに対して『こんなコトができるんだ、面白いね』という新鮮な感覚を持っていたことが、それ以前の"開発者"と言われる人たちとはちょっと違ったんじゃないかと思う」

今のテクノロジーに何ができるか/できないのか、から発想するのではなく、このコンテンツにはどんな表現が必要なのか、あるいはユーザーはどんな機能が求めているのか、から考える。今の時代にも通じるユーザーサイドからの発想は、関野さん言うところの「普通の感覚」にその源があった。

そんな関野さんの「普通の感覚」は、「TOKYOナンパストリート」を開発して20年以上経つ今でも生きているという。

「ATMあるでしょ、銀行の。いわゆる"五十日"になるとたくさんの人が並んで、一斉に操作するじゃない。俺は目があんまりよくないから、音声ガイドをたよりに操作するんだけど、『振り込みカードを入れて下さい』とか『振り込み金額を押して下さい』とか、横一列で一斉にやってると、分からなくなっちゃうんだよ。同じ声だから。だからオレは、一台おきに男の声と女の声を交互にしてくれって言ってるの。『オレは今男の人の声でやってる』って思ったら、両隣は女の声だから、間違えようがない。簡単にできるはずなのに、どこの銀行もやらない(笑)」

これはもう「ユニバーサルデザイン」的な考え方に近い。「ユーザーからの発想」を推し進め、さまざまな立場、状況に置かれた全てのユーザーが必要とする機能を考える。「ギャルゲーのために、フォントを作った男」関野さんの「普通の感覚」は、今の「ユニバーサルデザイン」にも通じる、ものづくりの基本的な姿勢だったといえる。

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