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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2013年8月21日

『皮膚感覚と人間のこころ』傳田 光洋

筆者:おっちゃん皮膚は、耳の母。

人間は、五感で世界を認識するというけれど、
なんと言っても、視覚が優位ですよね。
目で見る情報に多くを頼っています。

けれど、人間が視覚によって物体の形、質感、
距離感などを認識するには、
皮膚感覚と視覚映像が、一つに結び合わされなければいけない。
     結局、外部の世界を最初に認識するのは皮膚感覚なのです。
大森 荘蔵という哲学者は、
実在するのは、目に見えるものではなく、
触れることができるものだ、と言ったという。
     皮膚感覚は自他を区別するだけでなく、最も信頼できる
     世界(自己を含む)認識の機能であるといえます。

それも、生命の発生の順番をたどると、納得できる。
     細菌は脂質からできた細胞膜で覆われていますが、これが最古の
     皮膚と言えます。進化が進んだゾウリムシなどの原生動物になると、
     その細胞膜は様々なセンサー能力を持つようになる。
細胞膜は、臓器であり、あらゆる感覚センサーであり、
やがて、
     全身にばらまかれた感覚器が神経になり、それが増え絡まりあって
     神経網になり、やがてその一部が脳になったと考えられます。
皮膚は、感覚の母なのだ。
指先の検知力も、すばらしい。
ミクロン(一ミリの一〇〇〇分)の一単位の凸凹を検知できる。
皮膚表面で圧に応答するいわゆる圧点は、
ミリ単位でしか分布していないというのに。
どこで感じているのか。

さらに、皮膚は音も聞こえる。
耳に聞こえない聴覚がある。
人の耳が捉える音の波長領域は
二〇~一万六〇〇〇ヘルツ(一ヘルツは一秒間に一回振動)。
その領域を超えた音は、超音波と言われ、人の耳には聞こえない。
けれど、皮膚には聞こえている。

それは、山城芸能組を主宰する山城 祥二こと、
大橋 力の着眼により明らかになった。
大橋は、バリ島のガムラン演奏のときに、
奏者がトランス状態になることから着想した。
     ライブ演奏ではトランス状態になっても、CD録音された演奏では
     トランス状態にならないのです。通常のCDでは音は二万ヘルツ
     までしか録音されません。ところがガムランのライブ音源を
     解析すると、実に一〇万ヘルツ以上の音まで含まれていることが
     判明しました。
その音にからだは明らかに反応している。
     ライブ音源に身を置くと、脳波や血中のホルモン量にも変化が
     認められることを確認しました。耳に聞こえない高周波音は
     確実に人間の生理状態に影響を及ぼしているのです。

なぜ、皮膚に聞こえる音を耳がなくしたのか。
著者の仮説に興奮しました。
     進化の過程で、人間の耳は主として人間の声を聞くような構造に
     なったのかもしれません(人間の声は六〇~四〇〇〇ヘルツぐらい
     『感覚の地図帳』山内昭雄・鮎川武二著 講談社))。
     その一方で危険な出来事、例えば爆発などに付随する高周波音に
     瞬間的に反応する別のシステムが存在するのではないでしょうか。

人は、言葉によって、危機を同胞に伝えて、生き延びた。
そして、言葉によって、耳は音をなくし、危機対応力を落とした。
耳の祖先の皮膚が、耳がなくした音を拾っている。

アホ息子をカバーする母親のようです。
けなげじゃないですか。

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