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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2010年10月25日

「聖地」 さいたまゴールドシアター

筆者:いぬ歴史が語る歴史。

「さいたまゴールドシアター」は、55歳以上の団員しかいない劇団だ。
今は59歳~84歳までの42名が在籍しているという。
2005年の結成以来4回目となる公演は、
劇団サンプルの主宰・松井周の脚本による「聖地」を上演した。

近未来の日本。今よりも老人は緩やかに、優しく追い詰められている。
快適な老人ホームに押し込められ、尊厳死を選ぶことを強いられている。
山の中腹にある老人ホームで、かつてのアイドルが死んだ。
その死をきっかけに、アイドルの親衛隊だった男たちが老人ホームに侵入し、
老人ホームを支配し、そこに「聖地」の設立を宣言する...。
暴走する「妄想=物語」に、周囲の人間や、妄想した当人ですら巻き込まれ、
逆に「物語」を演じていかざるを得なくなる、
つまり物語に人が支配されていく構図は、サンプルと同様だ。
しかし、さいたまゴールドシアターの役者が演じることで、
この芝居にはある種の「生々しさ」が生まれたと思う。

僕はさいたまゴールドシアターを観るのは初めてだ。
役者たちは、プロではない。
55歳をすぎ、初めて演技する人も少なくないという。
滑舌が悪く、セリフがあまり聞き取れないこともしばしばだ。
舞台の周りには黒い服のスタッフが何人かいて、台本を広げている。
彼らは役者がセリフに詰まると、助け舟を出す係だ。
そういう意味では、普通の芝居とは、ちょっと違う。

しかし、彼ら劇団員の立ち姿には不思議な説得力がある。
時々、役を外れて、あるいは超えて、
役者本人が顔を出しているように思える瞬間がある。
老人ホーム経営者の欺瞞を糾弾し、国家を呪い、自分自身の残りの日々への夢を語る。
そのセリフは、役のものなのか、それとも演じる本人のものなのか。
分かってはいるけれど、分からなくなりそうになる瞬間がある。
年齢を重ね、経験を積んだ体が語るセリフ。
役者という「歴史」が、台本に描かれた「歴史」を語る。その生々しさ。
彼らの身体を通じて「聖地」の世界を観たと同時に、
僕は芝居を通じ、彼らの身体と歴史を観たのだ。

 

紹介演劇データ

  • タイトル:「聖地」
  • 劇団:さいたまゴールドシアター
  • 脚本:松井周
  • 演出:蜷川幸雄
  • 公演日:2010年9月
  • 劇場:彩の国さいたま芸術劇場 小ホール