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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2010年2月12日

「S高原から」 三条会

筆者:いぬさよならだけが。

この間、母親の七回忌があった。
なくなった直後と、今では自分の感情がまるで違う。
死んだというより、どこか遠くに行っている、みたいな感覚。

一昨年に、オヤジの飼っている犬が死んだ。
メールで報告を受け、行ってみるともう犬はいなかった。
動物病院で息を引き取り、そのまま焼いてもらったという。
亡骸を見ることはなかった。
だからいまだに、犬が死んだという実感はない。
ただ今目の前にいない、と思うだけだ。

「夢を見ていたわ
 望み高く生きて
 愛がすべてだと
 神は許し給うと」

「若く勇気溢れ
 夢は輝いてた
 自由にはばたき
 歓び追いかけた」

三条会「S高原から」は、
ミュージカル「レ・ミゼラブル」の有名なナンバー『夢破れて』で幕を開ける。
スーザン・ボイルが紅白で歌って話題になった曲だ。
高原のサナトリウム。伝染はしないらしいが、
しかし致死率の高いらしい病に侵された患者たちが、療養生活を送る。
緩やかに死を迎えつつある人々。
しかしそれは、誰でも同じだ。
僕らだって、緩やかに死んでいく。

三条会の演出家・関美能留さんは、戯曲を大胆に解釈した、
新鮮な演出で知られているそうだ。
ボクは初めて観た。
サナトリウムを学校の教室に置き換えていた。
患者は学生、医者は先生だ。
印象に残ったことがある。
見舞いに来た客(健康な人だ)が、舞台から外れ出番がなくなると、
鎌を持った看護婦が、客を殺してしまうのだ。
殺された客は倒れ、目覚めることはない。
え、逆じゃないの、死ぬのは患者じゃないの? と思ったけど、同じことだ。
いない人は、死んだことと同じだ。
逆に死んだ人は、いないのと同じだ。

二つわかったこと。
一つ、みな最後は、夢やぶれる。
誰もが夢の途中で死ぬ。無念じゃない死は、ない。
二つ、目の前にいない人は、死んでいるのと同じ、ということ。
さよならだけが、人生だ。

「夏 あの人来て
 喜びにあふれた
 私抱いたけど
 秋にはもういない」

「夢見た人生
 今地獄におちて
 二度と私には
 夢はかえらない」

 

紹介演劇データ

  • タイトル:「S高原から」
  • 劇団:三条会
  • 脚本:平田オリザ
  • 演出:関美能留
  • 公演日:2010年1月
  • 劇場:ザ・スズナリ(下北沢)