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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2009年12月24日

『ついこの間あった昔』 林 望

筆者:おっちゃん大晦日に晴れ着を買いに。

馬糞、混浴、葬送、チャンバラ、馬乗り、テレビなど、
どれもこれも、なつかしい。
昭和30年代までの日本の風景が、写真と林望さんの思い出で蘇る。

そう、おっちゃんには、遠い過去ではない。
どれもこれも、リアルで、鮮明な思い出。
のどかな時間、
貧しい風景、
でも、すきっ腹を抱えて、泣いた経験もないから、
貧しいつらさは、蘇ってこない。

この写真のなかにはなかったが、
ふと、急に、正月の晴れ着の思い出が浮かび上がってきた。
子どものころ、正月を迎えると、新しい服を買ってもらえた。
新しい服は、大晦日の寝床の枕元に、
きれいに畳んで寝る、のが習慣だった。

その正月用の服のそろえ方は、
オヤジの商売の羽振りによって、毎年変わる。
景気のいい年は、12月も中ごろになると、
母親と、いそいそ難波のデパート、高島屋に出向く。
そのときは、皮靴をはかせてもらって、大通りへでたら、タクシーに乗せられる。

パッとしない、「ぼちぼち」のときは、、
もう少し近くの阿倍野の近鉄デパートに出かける。
このときは、靴も皮靴ではなく、小学校に通学するときの運動靴。
近鉄まで、歩いて30分弱。
電車だと乗り換えが面倒だと言って、
たいがい、母に手をつながれて歩いて行った。

ある年は、どちらのデパートにも行かなかった。
ぼちぼち広まりかけていたクリスマスのおもちゃも、
近所のおもちゃ屋のものだった。
ことしは、正月用の服はないのか、
子ども心に心配した。
聞いてはいけないことも、感じていた。

そのまま、大晦日を迎えた。
日が落ちたころになって、息を切らすように人が訪ねてきた。
「ごめん」という声を聞くと、オヤジが真っ先に立った。
「どうも、どうも」に、
「いえいえ、おおきに、おおきに。」
「すんまへんでしたな。」
「いやあ、無理してもうて」
詫びる声と恐縮する声が重なる。

その客が帰ると、
すぐ母が次姉を呼び、次姉は私の手をひっぱるようにして、
市場の入口にある洋品店に連れて行った。

もう、店の入り口にはカーテンが引かれていた。
姉は、かまうことなく、「すいません」と大声を上げながら、
硝子戸をあけて、
頼んであったジャンパーをください、と言った。
姉は、「いっぺん着てみ」と言って、私に袖を通させた。
ギリギリのところで、
その正月、わたしだけに「晴れ着」ができた。

こんな思い出、
どこで50年以上も寝ててんやろ、と
じぶんでもびっくりしながら書き終えました。

みなさん、2010年も、よろしゅう、たのんます。