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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2009年5月27日

『ぼくと1ルピーの神様』ヴィカス・スワラップ

筆者:おっちゃん映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作。

映画「スラムドッグ$ミリオネア」を見てきました。
子役の出演料問題、
アカデミー作品賞を始め、数々の受賞など、
話題が豊富な映画です。

おもしろく、飽きずに見ましたが、
やっぱり、原作の方が味わいがあって、おもしろい。
映画とは、ストリーもかなり違います。
ご近所の知人、読書の達人にして、
評論家の北上次郎さんも絶賛の小説です。
 
主人公は、18歳のバーテンダー、ラム・ムハマンド・トーマスくん。
「ラム」は、ヒンズー教、
「ムハマンド」は、イスラム教、
「トーマス」は、キリスト教、
なぜか、三大宗教への信仰を示す名前がついています。
 
ラムくんは、捨て子。
デリーの教会の慈善箱に捨てられ、
孤児院に預けられ、
養子として引き取られ、
そして、またその養母に捨てられ、
2歳のとき、教会の牧師に育てられることになります。
 
その牧師のところに、
ヒンドゥー教、イスラム教の教徒代表者が訪ねてきます。
キリスト教徒の名前を名乗っていたラムくんの名前がいけない、と抗議を受ける。
結局、それぞれの教徒の名を冠することで折り合いをつけて、
ラムくんの奇妙な名前が出来上がります。
日本で言えば、「寿限無」ですね。
 
ラムくんは、18歳になって、
クイズ番組「十億は誰の手に?」に出場し、12問全問正解。
最高賞金10億ルピーを獲得する。
いや、正確に言えば、獲得する権利を得ます。
 
しかし、ここからが、またラムくんの不幸の始まり。
とても、10億ルピーを払いたくない番組担当者は、
インチキだと言い募る。
孤児で教養のないバーテンダーに難問がわかるわけがない。
インドの警視総監まで買収して、ラムくんに自白を迫る。
 
そこに救世主が現れる。
女性弁護士。
正解の謎は、ラムくんの人生にありました。
12問の正解に「出会っていた」ラムくん。
いままでの出来事を語ることで、その秘密を解き明かしていく。
 
ホモの映画スター、
幼児虐待に走る元エリート化学者、
自分の秘密を守るためにこどもを捨てた母、
40歳を過ぎても、ヒロインの頃の夢を追い求める女優、
40万ルピーがないために、無残に狂犬病で死んでいく子供、
妹を売春婦にして儲けを独り占めする兄、
捨て子の目をつぶし、物乞いに仕立てる慈善家。
 
これだけ次々、悲惨な人生を繰り出されながら、
ああ、おもしろかった、と本を閉じられるのは、
小説の仕掛けの絶妙さなのか、
翻訳文に漂うユーモアのせいか、
それとも、単純に私が歳を取ったということでしょうか。
 
30年以上前、インドに旅行し、コルカタ(当時はカルカッタ)の路傍の人に、
胸を締め付けられた私は、ほんとうに遠い昔になりました。