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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2009年1月16日

「マッスル・ハウス7」マッスル

筆者:いぬご家庭では、マネをしないで下さい。

1月3日、水道橋の後楽園ホールで、「マッスル」の興行を観た。
プロレスラー・マッスル坂井が主宰し、
「プロレスの向こう側」を標榜するこの団体は、
試合中に突然選手の動きがスローモーションになる「演出」や、
前代未聞の「追加興行」で物議を醸した。

ちなみに追加興行の試合結果は、その前日に行われた本興行と、
秒単位でまったく同じだったと聞く。

今回のマッスルは「マッスル坂井引退興行」の位置づけでスタート。
試合を重ねながら、合間にスキットを挟みながら、
マッスル坂井が個人的な「創作の悩み・行き詰まり」を吐露するスタイルは、
ここ数回の「マッスル」に共通する。
「テンションが上がらないから引退する」と叫ぶ坂井の目の前に、大仁田厚が登場。
反則・流血・場外乱闘入り乱れる大乱戦。
試合後の「大仁田劇場」でテンションを無理矢理上げられた坂井は、
またプロレスを続けることを誓い、興行は幕を閉じる。

全ての試合が終わり、エンドロールが流されたあとで、
バックスタンド側のスクリーンに、
英語のクレジットが映される。
「Please Don't Trust This at Home」。
直訳すれば「どうかご家庭では信じないで下さい」。
これは、アメリカで最大のプロレス団体・WWEのパロディだ。

プロレスを「エンターテインメント」に変えたWWEの試合には、
全てに「脚本・演出」が付いている。
新しく作られた「試合」は、
まずテレビ放映のない小さな興行で「テスト」され、
検証された後に、大きな興行で「上演」される。

そのWWE、テレビでの放映が終わると、
決まって団体からのメッセージを伝える映像が放映される。
その最後の言葉が、これだ。
「Please Don't Try This at Home(ご家庭では、マネをしないで下さい)」。
台本があって、段取りや結末が決まっていても、
その中で激しく動くレスラーのカラダは本物だ。
数メートルの高さから飛び降り、客席に突っ込む。
イスやバットや脚立で殴り合う。
流血だって、だいたいは血糊だろうが、たまにはホントに血が流れているはずだ。
いくら「八百長試合」であっても、マネをしたらケガをする。
だから、マネをしないで下さい、そんなメッセージだ。

マッスル坂井が、個人的な感情を吐露し続けるマッスルは、
小説で言えば「私小説」だ。
創作の悩みに始まり、自身のケガや病気のこと、
時には友人であり、
「マッスル」で活躍するレスラーの彼女が亡くなったことさえも、
ネタにする。

しかしそれは、完全な真実ではない。
それは私小説も同じだ。
「Please Don't Trust This at Home」、
この言葉には、ホントとウソの間を行ったり来たりする、
マッスルという興行の特色が、よく表現されていると思う。
ホントとウソ、その薄皮一枚の間に、
「マッスル」のおもしろさはある。

 

紹介興行データ

  • タイトル:『マッスルハウス7』
  • 団体:マッスル
  • 公演日:2009年1月
  • 劇場:後楽園ホール(水道橋)

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