• HOME
  • >  おっちゃんの「感想・鑑賞録」
文字サイズ
大
中
小

おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2008年12月19日

『荒野へ』ジョン・クラカワー

筆者:いぬ山に入って、出てこなかった人。

久しぶりに山へ出かけた。
11月のはじめ、1200メートルくらいの山はそこそこ寒い。
3時間くらいかけて山頂へ。

下山のルートは、あまり人の通らなそうな、マイナーな道でと決めた。
地図上では点線で表されているその登山道は、
歩く人も少なく(それでも数組の登山者とすれ違ったが)、
茶、黄、赤の落ち葉で敷き詰められた絨毯のような道を、
たった一人で、駆け足で下っていくのは、
なんとも楽しい体験だった。

ほぼ下りきって、川の音がだんだん大きくなってくる頃。
登山道の脇に、花束を見つけた。
近寄ってみると、花や葉の先がしんなりし始めている。
最近供えられたものだとわかる。
初冬の山に、場違いなほど色鮮やかなその花束は、
そこで何が起こったのかを、僕に容易に想像させた。

以前「山にこもっちゃえば、自由」なんじゃないか、と書いた。
その考えはまだ、変わってはいない。基本的には。
でも、山にこもったまま出てこない人は、どうなるのか。
ジョン・クラカワー『荒野へ』には、その答えの一つが書かれていた。

アメリカ人青年、クリス・マッカンドレス。
父親に反発し、自由な生き方を求めた彼は、
アトランタの大学を優秀な成績で卒業した後、
北アメリカ放浪の旅に出る。
ケルアックよろしく『オン・ザ・ロード』の日々を過ごす。
はじめは各地でアルバイトしながら、数日から数ヶ月おきに居場所を変え、
住み着いた場所で友人を作りながら旅を続けていたマッカンドレス。
いつからか孤独を志向するようになり、
人や街からどんどん離れていくようになる。
そして最後は、自給自足の生活をするべく訪れたアラスカの、
荒野にうち捨てられたバスの車内で、餓死しているところを発見される。

風船にヒモがついているのは、それを持っていないと、
どんどん空に上がっていて、
地上に戻ることができなくなってしまうからだ。
『荒野へ』で描かれているのは、
ヒモのない風船が、荒野へ、荒野へとどんどん「上がって」いって、
いつしか戻ることができなくなってしまった、そんな話だと思う。
ヒモは自分で切ったのか、それともヒモを持ってくれる人が誰もいなかったのか、
それともヒモなんて、はじめからついていない風船だったのか。
それはわからない。

おっちゃんの「感想・鑑賞録」とは!?
日がな一日、本に囲まれて生活をするおっちゃん。おっちゃんが読んだ本や、見た映画など、ジャンルを問わず紹介します。
感想・鑑賞録、いろいろ(カテゴリ)
書籍
演劇
音楽
その他
カテゴリを追加
バックナンバー
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
2011年2月
2011年1月
2010年12月
2010年11月
2010年10月
2010年9月
2010年8月
2010年7月
2010年6月
2010年5月
2010年4月
2010年3月
2010年2月
2010年1月
2009年12月
2009年11月
2009年10月
2009年9月
2009年8月
2009年7月
2009年6月
2009年5月
2009年4月
2009年3月
2009年2月
2009年1月
2008年12月
2008年11月
2008年10月
2008年9月
2008年8月
最近の投稿
『里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く』藻谷 浩介/NHK広島取材班
『あの夜、君が泣いたわけ-自閉症の子とともに生きて』野沢 和弘
『皮膚感覚と人間のこころ』傳田 光洋
『音をたずねて』三宮 麻由子
絵本『ボクも、川になって』
絵本『ボクも、川になって』
お求めはこちらへ
絵本『ボクは、なんにも ならない』
絵本『ボクは、 なんにも ならない』
お求めはこちらへ
FOOTRACK