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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2008年12月03日

『赤めだか』立川談春

筆者:おっちゃん「型なし」じゃなく、「型破り」になる方法

栴檀は双葉から芳し。いやいや、先代から芳し、か。

立川談春さんの修業物語は、少年時代の思い出から始まる。
談春少年は、子供のころ、お父さんに連れられて、戸田競艇場に行っていた。
そこで買ってもらうチョコフレークが大好物だった。
しかし、ある時、ビスコをあてがわれて、チョコフレーク欲しさに泣いた。
お父さんは呆れて、売店のチョコフレークを全部買って与えた。
四つまで我慢して食べたが、あとは、そっと鳩にまく。
鳩は、ふた箱ついばむと飛び去った。
とても食べ切れないと、目で訴える少年に、
― 菓子を欲しがるのは子供の権利だがな、
権利を主張するなら義務がついてまわるんだ。
覚えておけ。ひとつも残さず喰え―と、
お父さんは叱る。

談春少年は述懐する。
― 少年は競艇場のスタンドで、泣きながら権利と義務の因果関係を学んだ。
未だにチョコフレークを食べると人間の自由とは何かを考える。―
そして、
― 鳩の無責任さを思い出す。
と落げる。

お父さん、お母さん、そして、なりよりも、天才・立川談志師匠。
とてつもなく、おもろい人たちと紡ぎだされる話。
一話ごとに、落語の見事な落げが待っている。
棒高跳びの棒も助走もなしで、
宙を飛ぶような、舞うような、美しさ。
ほれぼれしました。

談春少年は、立川談志の落語に出会い、17歳で入門する。
高校中退、親からは勘当に合い、新聞配達をしながら、修業に入る。
睡眠は、かき集めて4時間弱、
すきっ腹と親友づきあいの二つ目暮らし。
全編、その苦労話、涙話か。
違いまんナ。そんな下衆な本ではありません。

―後年、酔った立川談志は云った。
「あのなあ、師匠なんてものは、
 誉めてやるぐらいしか弟子にしてやれることはないのかもしれん、と思うことがあるんだ」

談春に稽古をつけながら、談志は、
―「型ができていない者が芝居をするから型なしになる。メチャクチャだ。
  型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。
  どうだ、かわるか?
  難しすぎるか。結論を言えば型をつくるには稽古しかないんだ。」

「お前に嫉妬とは何かを教えてやる」と云って、談志は話し始めた。
―「己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱みを口であげつらって、
  自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬というんです。
  一緒になって同意してくれる仲間がいれば更に自分は安定する。
  本来なら相手に並び、抜くための行動、生活を送ればそれで解決するんだ。
  しかし、人間はなかなかそれができない。
  嫉妬している方が楽だからな。
  芸人なんぞそいう言う輩の固まりみたいなもんだ。
  だがそんなことで状況は何も変わらない。
  よく覚えてけ。現実は正解なんだ。
  時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない。
  現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。
  そこにはきっと、何故そうなったかという原因があるんだ。
  現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。
  その行動を起こせない奴を俺の基準で馬鹿と云う」

上質な笑いが、3ページに1回、
胸が熱くなる箴言が、10ページに1回。
いますぐ、あなたも、この本で、
天才・談志への弟子入りをお勧めします。

 

  

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