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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2008年11月26日

『大人の時間はなぜ短いのか』一川誠

加齢につれ、1年が短く感じられていく。
このような感覚は誰しもが覚えると思う。
私はこのような感覚の理由を次のように考えていた。

子供ころは、1年間に沢山の発見がある。
真っ白な状態で生まれ、白い部分に経験という色が塗られていく。
1年を振り返った時、あの色もあの色もと思い出し、
いくつもの経験の数から1年という時間の長さが評価される。
しかし、大人になると白い部分が少なくなる。
様々な色で埋め尽くされている状態になっている。
大人でも経験は重ねられるが、過去に塗った色と同じだったり、
似ていたりして1年を振り返っても発見や驚きを実感することが少ない。
そのように平坦な時間の流れによって1年が評価され、短く感じられてしまう。

この長年の推測を解決するために、
「大人の時間はなぜ短いのか」一川誠著を手に取った。
読み物としては決して面白いものではない。
学術的な部分が多々ある。
しかしながら、私の長年の推測の答え合わせになってくれた。
本書は、時間の評価を切り口にタイトルである
「大人の時間はなぜ短いのか」にアプローチしている。
時間を評価するために時計がある。
その時計には「物理的時計」と「心的時計」がある。
物理的時計とは、実際の時間を刻む時計であり、万人に共通の価値観である。
心的時計は個々人のなかにあるココロの時間を刻む。
物理的時計の時間と心的時計の時間は不一致なものである。
ココロは様々な要因で時間の進み方が変わるからである。
その不一致が時間に関して「錯覚」を発生させる。
これが、大人が時間を短く感じる理由の前提となる。

著者はその前提においていくつかの要因を仮説として提示してくれている。
例えば、「身体の代謝の低下が時間を早くする」
「感情により心的時計の進み方は変わる」
「広い空間は時間を長く感じさせる」
「脈絡やまとまりが時間を短くする」
「難しい課題は時間を短くする」などである。
興味があれば詳しくは本書をご覧いただきたい。
私の長年の推測もこれら仮説の範囲であると思い、少しだけ晴れやかな気分になった。

ドッグイヤーという言葉がある。
ITの世界での時間の進み方を表すものである。
ITという新しい時間の流れが社会に入ってきたことにより、
さらに時計の進み方が変わったように思う。
一方、社会構造や経済環境は旧来のパラダイムから脱することができず、
時間は遅い、というよりも止まっているかもしれない。
時間評価の軸が多様化し、そのなかで生活しているのが現代人である。

今年も11月も半ばだ。
やはり、短いねと「錯覚」で言ってしまう自分がいる。
しかし、その自分がいることは錯覚ではなく現実である。

「となりのお兄さん」(ゲスト)

 

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