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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2008年11月07日

『誰かが手を、握っているような気がしてならない』前田司郎

筆者:いぬ握った手を、握り返すために。

書き出しは、こうだ。

  「しかし、私はどうやら神のようである。」

でもこれって、別に不思議なことじゃない。
ていうか、僕だって自分を神だと思ってるくらいだ。
あ、それって傲慢? 言い過ぎた? むしろ頭おかしい?
でも本当のことだ。
だって、世の中のたいていの出来事は、僕の予想の範囲内だ。

びっくりするようなことは、何も起きない。
知らないことなんて何もない。
その気になれば、一歩も動かないで世界のすべてを知ることができる。
ってことは、知ろうとする必要さえないってことだ。

だから、
自分の娘が「神様の声が聞こえる」とか言いはじめても、
その娘が、夫との子ではないかもしれなくても、
そう思い悩む妻が家出をしても、
さほど驚くことじゃない。
なんでそうなってるのか、みんなが何を考えているのか、
全部わかってる。なにせ神様だから。

ついでにいうと、神様はどこにでもいる。
神様は僕でもあるけど、あなたでもある。
隣の家の人も神様だろう、たぶん。
お互い、相手が神様だってことを知ってる。
何かを伝え合う必要なんてない。
だって、相手が何を考えてるか、もうわかってるんだからね。
相手が自分のことをわかってるってことも、わかってる。
一言もしゃべらなくたっていいくらいだ。

だから、神様は/僕は/あなたは、孤独だ。
自分が孤独だってことをわからないくらい孤独だ。
世界のことは全部わかってて、一人で全員なのに、ひとりぼっちだ。
世界は神様の/僕の/あなたの頭の中で完結してしまう。
それでいいんだ、だって神様なんだもん。

でも、、、 これはなんだろう。

  「誰かが手を、握っているような気がしてならない」
  「誰かが私の、左手を握っているような気がする」

この手に感じるぬくもりは、いったいなんなんだろう。
それは「他者」だ。
何を考えてるのかわからない、どこにいるのかもわからない。
他者が自分に触れてくることは、不安で怖いことだ。
不快に思ったり、怒りをおぼえることもあるだろう。
でもそれは、あったかくて、ときどきうれしいことでもある。ような気がする。

だからまず、神様であることをやめよう。
そして、誰かが握ってくれているこの手を、
握り返すところからはじめよう。

 

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日がな一日、本に囲まれて生活をするおっちゃん。おっちゃんが読んだ本や、見た映画など、ジャンルを問わず紹介します。
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