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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2008年10月01日

プリファブ・スプラウト

筆者:いぬどこにもない「記憶」

仕事が終わって家につくのは夜、やや深めの時間。
ソファに腰を下ろし、なんとなくテレビをつけるのですが、
疲れていることもあってか、テンションの高い民放地上波のバラエティとか、
真面目に、頭を動かしながら観なきゃいけないNHKのドキュメンタリーには、
なかなか食指が動かない。
そんな時僕は、BS民放のゆるーい空気感に浸ることにしています。


その時間帯、BS民放は「世界遺産の旅」とか「居酒屋探訪」とか、
「流して」見ることのできる気軽な番組を流している。
合間に時々「青春のポップス全集」みたいなCDセットの宣伝をやっていることがある。
「いちご白書をもう一度」、「学生街の喫茶店」。
当時の流行歌にかぶせて、
あさま山荘事件や横井庄一さん発見などのニュース映像、
あるいは銀座を歩く当時の若者の様子が流される。
「当時の空気を、このCDでよみがえらせませんか」というわけです。

「うおー懐かしいなあ」とじっくり映像を観てしまう僕ですが、
よくよく考えてみるとこれはオカシイ。
1973年生まれ。当時のことなんか、記憶にあるわけがない。
下手したら、生まれてもいない時代の映像を観て、懐かしがっているのです。
確かに記憶にはない。でも、なぜか懐かしいような気がする。
懐かしいはウソだとしても、
なにかしら刺激されるものがある。

「プリファブ・スプラウト」というバンドがあります。
彼らのミュージックビデオには、
この「ポップス全集」の宣伝とよく似た印象を持つものがある。

たとえば、彼らが2001年に発表したアルバム「アンドロメダ・ハイツ」。
その1曲目「エレクトリック・ギターズ」のビデオは、こんな風です。
http://jp.youtube.com/watch?v=OaoTdEZ2_DE

タイトルに反して「アコースティック」ギターを持ったボーカル、
パディ・マクアルーンの後ろには、
ロックスターに群がり、歓喜し、倒れ込むファンたちのモノクロ映像。
映像をバックに、パディはこう歌います。

I'd a dream that we were rock stars
And that flash bulbs popped the air
And girls fainted, every time we shook our hair.

We were songbirds, we were Greek Gods
We were singled out by fate
We were quoted out of context - it was great.

ロックスターになった夢を見た。
たくさんのフラッシュがたかれ、
僕らが髪を振るたびに、女の子が倒れる。

僕らは小鳥だった。ギリシャの神だった。
運命の神によって選ばれた存在だった。
文脈なんて関係なしに引用された。
それってすごいことだ。

歌っているうちに背後のスクリーンから、
ロックスターの扮装をした男達が飛び出してくるのですが、
ベルボトムにラメ入りのシャツ、大きなサングラスと、
彼らはいずれも60~70年代のロックスターの格好。
パディの夢見ている「ロックスター」は、現代のそれではなく、
20年~30年前のものなのです。

あるいは、彼らの一番新しいアルバム(とはいえ発表は2001年)、
「ガンマン・アンド・アザー・ストーリーズ」に収録された、
「カウボーイ・ドリームス」。
ウエスタンブーツにスカーフ、ベスト、
カウボーイルックで決めたパディ・マクアルーンが、
昔のカウボーイ映画が流れるスクリーンを背景に、
西部劇の世界を夢みています。
http://jp.youtube.com/watch?v=Xps2q4WKF04

I wanna be remembered as an outlaw
The boy who stole your heart
I wanna be the guy who wears the white hat
and rides across the plain

あなたの心を奪ったならず者として、
憶えていてもらいたい。
白い帽子をかぶって、馬に乗って平原をわたる男になりたい。

プリファブ・スプラウトは、
1980年代にイギリス・ニューキャッスルで結成された「ポップス」バンド。
ロックとも、カウボーイとも全くの無縁です。
彼らが夢見て、歌っているのは、彼自身体験したことのない、憶えていない、
いわば「どこにもない記憶」なのです。

どこにもない「記憶」を懐かしがる。
それはもはや妄想の領域に入っているわけですが、
僕はそんな妄想がとても好きです。
それがなぜなのかは、よく分からないのですが、
単に過去に浸るのが楽しい、というだけでなく、
体験しない、どこにもない過去の記憶から、
あり得たかも知れない現在や未来もまた、
妄想できるからかも知れません。

 

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日がな一日、本に囲まれて生活をするおっちゃん。おっちゃんが読んだ本や、見た映画など、ジャンルを問わず紹介します。
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