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おっちゃんの「感想・鑑賞録」

2008年9月05日

「WALTZ MACBETH」東京デスロック

筆者:いぬ1回きりの旅は、今日も出発する。

東京デスロック『WALTZ MACBETH』を観た。

舞台の始まりは、とても静かだ。
明転すると、真っ白な舞台の上には、一人の着物姿の男と、椅子。
所在なげに男があたりを見回すうちに、一人、また一人と役者があらわれる。
それぞれ手には椅子を持って。
舞台上でお互い、探り合うような視線のやり取り。


なんとなく、相手のそばに置かれた椅子を目で追う。
はじまるのは「椅子取りゲーム」。
演出家・多田淳之介は、「マクベス」の権力を巡る争いを、
誰もが子どもの頃に親しんだ遊戯に見立てた。

遊戯は、観ているものにはわからないくらいゆっくりと、
しかし確実に激しくなっていく。
ふと気付くと、1時間前の静かな舞台とは、
まったく違う世界を観せられている。
役者達は疲れ切って、着物の裾ははだけ、髪は乱れ、額には汗がにじみ、吐く息は荒い。
純白だったはずの舞台は、血しぶき(に見立てたワイン)で染まる。

遊戯仕立ての「マクベス」を観ていたはずの僕は、そこで気付く。
待てよ、これって「演劇そのもの」ってことじゃないか?
血で汚された舞台は、元には戻らない。乱れた着物は、直せない。
一度幕が上がってしまえば、もう戻れない。あとは終劇に向かって、突き進んでいくだけ。
演劇って、この不可逆な一回性を、毎日毎日楽しむってことだ。

だから役者達は、大爆音で流れるperfumeの「GAME」にのせて、
今日も椅子の回りを走り回る。
疲れ切っているのに、不思議に楽しそうな彼らもまた、
毎日起きる、でもその日にしか起こらない「演劇」を味わっている。

紹介演劇データ

  • タイトル:『WALTZ MACBETH』
  • 作:W・シェークスピヤ(坪内逍遙訳)
  • 演出:多田淳之介
  • 劇団:東京デスロック
  • 公演日:2008年5月
  • 劇場:吉祥寺シアター(吉祥寺)