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おっちゃんの「日々こもごも」

2011年11月07日

松本の三城

1週間ほど前に、
ゼルビアの長野でのアウエー戦を応援するために、出掛けた。
観光を兼ねて、松本で一泊した。

昼近くについて、
ネットで見つけた蕎麦屋に直行した。
わたしは、あまり気が進まなかった。
商売の仕方が、気取っているようで。
なにしろ、昼の時間しかやっていない。三時ごろで店じまいする。
品書きはない。一つのコースのみ。
店構えは、しっくいの白壁。高級割烹風。

予約せずに行くと、店内には客しかいない。
戸を開ける音が聞こえたはずなのに、誰も出てこない。
やっぱりな。
店の奥をのぞくと、何の用?と言うような表情の女将が立っていた。
もう、満席で、1時ごろにならなければ、空かない。
ここまで来たんだ、仕方がない。
予約することにした。

1時に出直す。
注文しなくても、付きだしとして、キノコの煮物。
少し冷やした地酒が一合。
うまい。
この趣向は、昔、半蔵門に事務所があるとき、
ときどき覗いた蕎麦屋にそっくり。
あれ、あれも、確か「三城」って言わなかったか。
最後のデザートの代わりに、
黒豆が出る、と聞いて、これは間違いない。
ここまでそっくりなら、半蔵門の蕎麦屋と、何かの縁はあるはずだ。

表情を崩さない女将が、器を片付けに来る。
「このお店と、よく似た店が、半蔵門にありまして...」というと、
「うちです。5年前に、松本に越してきました」
「いやあ、黒豆が出ると聞いて、こりゃ、間違いなと思って」
「わたしも、お客さんに覚えがあって、伺おうと思っていました」
それから、しばらく、思い出話をした。

帰りは、店の外まで送ってくれた。
酒の酔いも手伝って、気分は上々。
じゃあ、また寄せてもらいます、と挨拶して歩き出して、気づいた。
女将さんと話しするのは、初めてだった。
なにしろ、注文もすることのない店だったから。