深い眠りと少しの笑いを。
昼過ぎに、友の病室に着いた。
ノックすると、看護婦さんが処置を終えて、出てくるところだった。
友は、ベッドに横になっていた。
無精ひげが生え、前よりも病人らしくなっていた。
声もかすれていた。
処置を終えて、ホッと一息つくころに来たようだ。
「いまから、唯一の仕事にかかるところだった。」と言う。
なんや、と聞くと、
「大量の薬を飲むことだけだよ、仕事と言えば。」と答えて、
寝返りを打った。
すごい!
寝返りが軽やかになっている。
おお、薬がだいぶ効いてきたらしい。
気分も少しはよくなったようだ。
毎日、誰か見舞いに来てくれる。
たいがい、薬を飲む時間にぶつかるんだよ、と笑う。
おや、笑うこともできるんだ、と言うと、
ありがたいことに、と答えた。
見舞客の中には、3週間ほどの間に、
4回も5回も来てくれた友がいる。
なぜなんだと思う?と問いかけてきた。
「お前の、キャラやろ」と答えた。
人柄・人望というのは、言う方が照れる。
それもあるかも知れないけれど、
友は、ほとんど50代。
まあ、人生を半分終えたところで、
自分の人生を振り返り、今後を見つめに来るんじゃないか、と思ったという。
なるほど、それは、あるかもしれない。
私も病室を出て、帰り道、
彼のことを思い、自分の越し方行く末に想いが流れる。
第二の理由は、この病室の「気」だと、力強い声で言った。
この病院には、強い気がある。
だから、みんな元気な顔をして帰って行くんだ。
こんなこと言う奴じゃなかった。
思わず顔を見つめ直した。
「そうなんだ、『気』が強い。
だから、この病室なら、治らなければおかしい。」
彼は、信じている。
彼の自信に満ちた顔を見て、ボクも信じる気になった。
「病は気から」だからな。
痛みが薄れて、深い眠りと少しの笑いが戻ってくれば、
「のうてんき」な彼なら、きっと、治るさ。
でも、差額ベッド代1日3万8千円は、きついな、と
大笑いして、帰った。



