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おっちゃんの「日々こもごも」

2009年11月25日

海老沢泰久さんに届けられなった絵本。

筆者:おっちゃん おっちゃんは、海老沢泰久さんに
絵本『ボクは、なんにもならない』をもらってもらうつもりだった。
残念ながら、永遠に届けられないことになったと知ったのは、
朝日新聞で、月に一度掲載される8月の「訃報欄」だった。
海老沢さんは、8月13日に亡くなっていた。

昨年の暮れ、10年以上ぶりに、ひょっこり訪ねた銀座の飲み屋で、
ソファーに座るなり、
「どう、井上陽水の温もりがしない?」と言われた。
陽水は大好きやけれど、なぜ?
「陽水さんが、来てくれたのよ。」と、ママの答え。
びっくりして、
「へえー、陽水がおなじみか。」と言うと、
「いえ、初めてよ。エビちゃんが連れてきてくれたのよ。」
エビちゃんって、あの人気の子か。
「違うわよ、エビちゃんって、作家の海老沢泰久さんよ」
「あの『帰郷』の?」
「そう、昔からの馴染みなの。」
海老沢泰久は、陽水の本『満月、空に満月』も書いている。
それなら、わかる。

わたしは、海老沢さんの文章の大ファンだ。
感激して、ママに絵本を出すことを告白し、
もうすぐ出るから、出たら、すぐに届ける。
海老沢さんに渡してな、と頼む。
「いいわよ、いいわよ。
エビちゃんのファンだと言ったら、喜ぶから。」と
ママが言ってくれて、喜び勇んで店を出たけれど、
届けないまま、もう届けることができないことになった。
送ってくれるときに、ママが言ったことに、少し引っかかった。
それで、向かいかけた足が引っ込むようになった。
私は嫌味ととったけれど、嫌味でも何でもなかったかもしれない。
すぐに届ければよかった、読んでくれなくても。
感想なんか、言ってくれなくても。
後悔が残る。

その思いも、この前の息子との雑談でぶり返した。
スポーツ関係の広報の仕事に就いている息子が、
「いい文書を書くには、どうすればいい。」と聞くから、
「いい文章を読むことやろ」と答え、
「どんな文章がいい。」と来たから、
素晴らしい文章はいっぱいあるけれど、すぐ、
「海老沢泰久さんの本がええな。」と言った。
中学生程度の国語力で、深いことが言え、伝えることができる、と説明した。
スポーツ関係の作品も多い。
「視点が素晴らしいからやと思う。
でも、真似は無理やな。」と、偉そうに付け加えた。

今度の休み、天気がよかったら、
人に勧めんと、自分で読みなおそうかな。
やっぱり『帰郷』か『ヴェテラン』がいい。
縁側に足を出して、
畳にねっ転がって読んだら、最高や。

読み終えたら、とても豊かな気分になれます。