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おっちゃんの「日々こもごも」

2008年12月28日

定年の日、夫婦のディナー。

筆者:おっちゃん もう、何日も前のことだが。嫁はんが家を留守にしているので、
駅前のイタリアンで、ひとりの晩飯。

向い側のテーブルには上品そうなご夫婦。
シェフが挨拶に出てくる。
おなじみさんだ。
 
さびしいですね、先生。
はい、今日で退官です。
先生の横の椅子におかれた紙袋から、花束がいくつものぞいている。
 
おっちゃんは、ほんま、野次馬やなあ。
自然と目が走り、耳が立つ。
きっと、駅前の大学の先生や。
優雅そうやな。
来週は、軽井沢でゴルフとか、
春には、カナダにスキーにいこうか、とかの和やかな会話。
子供のころにイメージした大学教授らしい暮らしや。
 
「夏のスーツを、洗濯だすのを
 すっかり忘れていたわ。」と奥さまは言った。
「そうだったね。」と先生。
「来年、着ることに頭が行かなかったのかな。」
「そうかも知れない。」
「どうする、みんな洗濯に出す?」
「いやあ、もう着ないスーツもあるし。」
「そうね、もう何着もいらないもんね。」
「着ないスーツを洗濯にだすのは、もったいないし。」
「2着ぐらいあれば、いいんじゃない。
 あとは、捨てたら。」
 
スムーズに流れていた会話が、
一瞬、このときだけ空白ができた。
 
もう、捨てようか、と自分で言いたかったのか、
それとも、やはり、奥さんに言ってもらって、踏ん切りがついたのか。

踏み出す一歩の重たさよ。 
ああ、定年!